都市を考え40年


都市を考え40年

都市経営の研究

アーバンデザインと都市経営

当社は、昭和44年に建築家黒川紀章が、「建築デザインを生かすためには都市デザインすなわちアーバンデザインが不可欠」と考えて設立した会社です。同年は人類が初めて月に足を踏み入れた年。地方自治法に、自治体がその地域の総合的かつ計画的な行政運営を図るための最上位計画としての総合計画策定が義務づけられた年でもありました。前年の昭和43年には都市計画法が制定され、同45年の大阪万博において「月の石」に並びながら未来都市を垣間見ました。高度経済成長のもとに都市が拡大整備される元気な時代でした。

以来40年あまり、土地利用の誘導や道路・公園・下水道等の施設整備が進むとともに、個性や文化、アメニティや美しさ、環境や防災の視点が求められ、都市はずいぶん様変わりしました。その間当社は、全国各地で「建築・都市計画・土木・造園ランドスケープ」の4つの分野が複合する空間の計画・設計に携わってきましたが、常に黒川が求めたアーバンデザインを明らかにしつつ進めてきました。当社にとってアーバンデザインは、都市計画・都市デザインであり、都市政策・都市経営であり、事業の理念、永遠の研究テーマでもあります。

都市計画と都市経営

都市計画とは何か?都市計画法や教科書をひも解くと、「農林漁業との健全な調和を図りつつ、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保するために、都市の将来目標に向かって定める都市圏域内の制限を伴った土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業の計画」であり、都市計画を実現する手法として「規制(土地利用計画と都市施設計画)」と「事業(都市施設建設事業と市街地開発事業)」があるとされています。「都市政策が目標として設定する都市機能の達成、実現、稼働を支える仕組みである都市構造の規模、形態、システムを計画・設定するのが都市計画」といった解説もあり、都市計画と都市政策は密接な関係があります。都市計画は総合計画の一部門計画との見方が分かりやすいかもしれません。だから当社が都市政策を大切に考えるのは、ごく当たり前の話と言えるでしょう。

一方、都市経営とは何か?ちょうど当社が創立された昭和44年に出された「市町村の経営」(遠藤文夫著/第一法規)には、高度経済成長の絶頂期の急激な都市化と自治体に対する住民意識の変化を背景に、「市町村がその与えられた資源を最も有効に活用して、住民に対する最大のサービスを生み出す方法論である」とし、「あえて『経営』と呼ぶゆえん」を「第一に市町村が単に国の出先機関というような行政の機関であるというような行政機関であることでなくて、生きた一つの自治体であるということを含意するものであり、第二に、その運営の方法論として、企業でも用いられている新時代の経営技法を最高度に活用すること、すなわち問題への接近のしかたの画期的な転換を意味するためである」、さらに市町村の経営は「計画→実施→調整・評価」のサイクルとして把握されるとし、さらに「住民と経営組織の一致した協力」が必要との解説があるそうです。当時既に、今日の行財政改革やNPM・新しい公共などの問題や発想が先取りされていることに驚きます。

都市経営とは自治体経営、自治体を一つの経営体とみなし、市長を会社の社長になぞらえて、市民、地域住民に最小の費用負担と事業コストをもって最大の都市地域福祉効果を達成する目的をもつものであり、それを実現する行為でありましょう。現在の都市政策課題は、人口減少・高齢化、環境・開発、都市経営コスト・都市間競争、住民ニーズの多様化・・・など、多岐にわたります。それらを少しでも解決していくことに関わりたいし、できる限り「個性的で面白い街づくり」を追い求め、人々の豊かな生活を創造したい。それが、アーバンのDNAのように思います。

「都市を考える」が必須の会社

この都市計画(都市経営)分野については、黒川の後輩である井上正良が永く当社社長を務め、多くの都市計画業務及びその前提となる都市政策創造に携わるとともに後進を育ててきました。

当社の仕事は、「都市を考える」から始まります。都市計画や市街地整備事業といった都市政策をも視野に入れながら調査分析を繰り返す業務のみならずアンケート調査や土木構造物設計といった部分的な業務でも、業務の背景や目的、都市の政策の方向性、社会の変化などを調査分析し、業務を超えた提案や成果を求めるようにしてきました。「都市のねらいに応える」「成果・効果を上げることが業務」と言い換えてもいいでしょう。そのため、建築や土木、造園や環境系の学科の研究領域・業務分野でありながら、人口・産業、水・環境、教育・文化、医療・福祉・介護、少子化・人権、地域自治・公共サービス、NPO・ボランティア等々、様々な社会問題を踏まえた業務成果が求められ、研究・研鑽を重ねつつお応えしてきました。

地域密着の必要性から、平成10年に東日本(東京本社)と西日本(福岡本社)の2つの拠点形式を採りましたが、いずれも黒川・井上の姿勢を踏襲し、「アーバンならなんとかなる」〜都市政策や都市経営に視点を持った「問題解決型のまちづくり」を特徴として継承しています。また、このようなアーバンの仕事への姿勢から、市長や市長政策ブレーン、政策アドバイザーなどで活躍中の諸先輩をも輩出することになりました。

行政が育てた「西日本」アーバン

当社は、黒川・井上が生み育てたアーバンデザインコンサルタントの西日本地域を踏襲した会社です。営業所時代を含めてこれまで、「景観調査設計」や「屋外広告物調査」、「個性あるまちづくり(ふるさとの顔づくりモデル土地区画整理事業ほか)」「緑の基本計画」、「公共サインシステム」などでパイオニア的な仕事をさせていただきました。「アイランドシティ野鳥公園(福岡市)」や「西鉄天神大牟田連続立体交差事業線(春日市・大野城市)」は、当社が携わったと当初調査から20年、ようやく形が見えてきたところです。また、「総合計画(前出)や平成12年の都市計画法改正で創設された都市計画マスタープラン策定では、ワークショップによる「参加型まちづくり」や「都市の魅力・個性づくり」「コンパクトシティ」などの導入に取り組みました。阪神淡路や東北地方の大震災、自殺・孤独死や交通事故増加の社会的要請から、防災・防犯・交通安全などを視点とした地域まちづくりも手がけるようになりました。これらはすべて、行政との連携のなかから生まれた業務であり、黒川・井上とは異なるお師匠さまを得、育てられたことが西日本アーバンの特徴と言えましょう。
時代は移り現在は、「協働のまちづくり」や「地域活性化・コミュニティ再編」、「NPO・ボランティア育成」等の分野で、行政や大学・NPO等の諸団体と連携しつつ、新しいまちづくりを模索中です。都市経営の研究の一環として、公園を活用しながら公園を管理するビジネスとして「公園前食堂チェーン」を創造し、実証実験として2年間、民間版コミュニティセンター「板付ドリチャン倶楽部」を実施して、地域ビジネスやイベントのノウハウを得ました。また、指定管理者制度については、制度創設後すぐに研究を始め、自社では福岡市NPOボランティア交流センター「あすみん」の指定管理者に選定されています。「仕事がもらえたらうれしいな。難しい仕事が来たら楽しいぞ。」今後も、黒川・井上の姿勢を受け継ぎ「勝手に政策ブレーン」を目指して、都市政策や都市経営を研究し、技術と熱意で挑戦を続ける所存です。

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